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新型コロナウイルス感染拡大に関する緊急提言

2021.08.26

目次

■~発熱外来の現場から~「コロナが終わったら」はいつ来るの
海老名呼吸器科クリニック 朴 在善


■「新型コロナの入院治療をする現場から、みなさんへ」
海老名総合病院 小泉 正樹


■「発熱外来の一医療現場から」
さがみ野内科・呼吸器クリニック 野島 大輔


■「ウイルスとワクチンについて」
海老名市医師会副会長・新型コロナ担当 えびな整形外科 山田 博之

~発熱外来の現場から~
「コロナが終わったら」はいつ来るの

文責 海老名呼吸器科クリニック 朴 在善

昨年以来、コロナで世界が一変し、多くの人達が我慢を強いられ、辛く、苦しい日々が続いています。

「コロナが終わったら」暑いマスクを外そう、気兼ねなく出かけよう、家族に会おう、旅行に行こう、美味しいものを食べに行こう、以前のような生活を取り戻そう、皆さん、そんな日々を心に描いて頑張っているのだと思います。

しかし残念ながら 2021 年 8 月中旬の段階で、感染者数は過去最悪を更新しています。コロナが終わるどころか、これからが本番なのではと思うくらい、辛く悲しい現実が目の前にあります。まだまだ、「コロナが終わったら」の日を迎えられる予想が全く立たないのです。

発熱患者を診る医療機関を訪れる人たちは急増し、地域の基幹病院はクラスター発生で閉鎖され、重症患者を乗せた救急車が行き場がなく立ち往生しているのが今の市内の医療機関の現状です。このままでは医療崩壊は目の前に、そして社会も立ち行かなくなってしまう危機的状況なのです。

でも一つだけ希望が見えます。ワクチン接種を終えた高齢者の患者さんが減少しているということです。コロナワクチンが有効な手段だという事だと、現場の手応えとして感じているのです。


コロナが終わるには 3 つのシナリオが考えられます。一つはウイルスが何処かに行ってくれること。二つ目は特効薬ができること。そして三つ目は多くの人が免疫を獲得してコロナに負けない様になること、です。

残念ながら一つ目は期待できません。インフルエンザのように季節が過ぎれば収まるかという、淡い予測は吹き飛びました。

二つ目の特効薬は世界中の製薬会社が血眼になって開発を進めていますが、まだまだ時間がかかりそうです。普及までには多くの犠牲者が出るでしょう。

三つ目が、ワクチンです。手洗いマスクやソーシャルディスタンスという予防策はもちろんですが、かかりにくくする・重症化させない、という点では今、私たちが手にすることのできる、唯一の「武器」なのです。


コロナワクチンは、今までの他のウイルスに対する地道な研究と、発達した IT技術のおかげで驚くべき短期間で実用化に漕ぎ着けました。実はこれは物凄いことでまさに人類の英知を結集したといっても過言ではありません。

ところが残念ながらワクチンに対する否定的な意見があり、そのせいで特に若い人への接種が進まないのではという懸念があります。

新しいワクチンへの不安から効果や副作用を心配する気持ちはわかります。

一定の割合で接種後に発熱や腕の腫れ痛みといった「副反応」はありますし、ごく稀にですが強いアレルギー症状などの「副作用」もあります。

しかしそれとは別の、「遺伝子が操作される」「不妊になる」といった、根拠のないデマとも言える情報で、ワクチンを避ける意見があります。

これらは医学的・統計学的に根拠がかなり乏しいのに、ネットで無責任に広がっています。ワクチン接種する・しないは個人の意思が尊重なければいけません。
ただしそれはデマなどではないキチンとした情報に基づいて判断されるべきなのです。

副作用のないワクチンや医薬品はありません。この為我々は万が一に備えて体勢を整えて接種に臨んでいます。また、ワクチンの効果だって 100%では無いので、接種後もマスク着用や感染予防対策は必要です。しかし「絶対」に有効で、100%安全・安心というものは世の中に存在するのでしょうか。今の医療現場は「絶対」、を待っている余裕はありません。コロナは今、すごい勢いで襲ってきているのです。ワクチン接種は、待った無しの状況まで来ております。

一度、コロナに罹ってしまったら、ワクチンの副作用の割合など比べ物にならないくらいひどく辛いことが起きます。罹っている時の症状も厳しいですが、重症化した場合、命の危険に晒されるのはもちろん、回復しても後遺症が残る事も多いです。コロナにかかった事のある方の多くは、あの辛さ、恐怖が 2 度と嫌だからとワクチンを希望されます。


コロナ最前線にいる 1 人として今、強く感じていることは、ワクチンが現時点での唯一の希望だということです。

コロナを終息させるには、我々医療従事者だけではもう限界なのです。これ以上の緊急事態宣言や社会生活の制限も、多くの人にとっても限界なはずです。

社会にいる人全員が、他人事として考えるのではなく、出来ることを出来る限り行う。今はそれが求められていると思います。「いつかコロナが終わったら」を迎えるためには、市民一人一人、みんなの協力が必要なのです。どうか皆さん、力を貸してください。

みんなでこの危機を乗り越えていきましょう。

「新型コロナの入院治療をする現場から、みなさんへ」

文責 海老名総合病院 小泉 正樹

海老名総合病院では、海老名市役所にほど近い別建物に東館病棟を開設して、ここまでに 600 名を超える新型コロナの入院患者さんを身近にみてきました。完全に一般社会と隔絶された隔離病棟ですから、その中で起こっていることを知る方は少ないと思います。ここでは、一般の方々にぜひとも知っていただきたいことを中心に書きたいと思います。


まずはじめに、恐れられている新型コロナ感染症ですが、東館病棟に入院となった方々の92%の方が無事に退院されています。このことは、「適切な医療を受けることが出来さえすれば」たいていは助かる病気だということです。
ただし、入院してくる方々は中等症と言われる状態で入院になりますが、誤解を恐れずに表現するならば、患者さん本人にとっての中等症とは「本当に死にそうな思い」をするくらいの状態だと知ってください。さらに重症とは、「命が助かるかどうかが五分五分」くらいの状況を指します。


今は入院になる方の大部分が 40-50 歳代の方々ですが、20 代や 30 代の方もめずらしくなくなってきました。年齢に関わらず、入院してくる方は皆一様に「死にそうな思い」をしたあとに入院してきます。

特に現在、入院ベッドがないという危機的状況のために、医者から見てもこのままでは死んでしまいかねない状況になるまで入院治療ができない状況です。適切な入院治療さえできればほとんどの方が助かることがわかっていながら、本当に悪くなるまで手を差し伸べることができない現状に歯がゆい思いをしています。

そこで海老名総合病院ではコロナ病床の拡大を決定しましたが、今度はコロナではない病気で命が危うくなる方が増えるであろうことを心配しています。

こういった現場を実際に見ている私にしてみれば、何となく不安だからワクチン接種はやめておく、という判断がどのようなことになるかをよく知っています。

ワクチン接種をしたのに感染した、という方々もいるのは事実ですが、入院になるほど悪くなることがあまりありません。仮に入院するほど悪化したとしても、命が危なくなるまで悪化する人はほとんど見かけません。



8 月 22 日、神奈川県では 2524 名の新たな感染者が報告されました。

このうち 40-50 歳代の方が約 750 名。この 750 名のうち、15%に当たる 110 名が1週間後の 8 月末に入院先を求めて死にそうな思いをすることになります。
県央地域にすれば 1 日 11 名ほど、海老名市だけでも1日 2 名ほど、毎日確実に中等症になっていくのが現実です。


では、20-30 歳代の方ではどうでしょうか。ワクチン接種があろうがなかろうが、確率的に入院になることは多くないのは事実です。でも自分自身はは大丈夫だったとしても、家族・恋人・友人、大事なまわりのひとを巻き込むことまでイメージができているでしょうか。


デルタ株の蔓延とともに、ひとり感染すると家族全員に感染が拡大するのが当たり前になってしまいました。

ある若い夫婦が陽性になりました。療養にあたって、赤ちゃんを祖父母に預けた結果、高齢だった祖父母も感染して不幸な結果になりました。

母、祖父母を立て続けにコロナで亡くした若い方は、家族に感染を持ち込んだのは自分だと悲痛な表情をしていました。


ワクチンは感染を完全に防ぐものではありませんが、不幸な結末にならずに済むという意味では、入院病棟ではその違いをいやというほど実感しています。

自分自身を守るためだけではなく、家族を守るため、あるいは家族に悲痛な思いをさせないためにもワクチンは大事な武器だと考えます。


さいごに。読んでくださった皆さんの適切な判断と行動が、東館病棟で働く私たちの助けになります。災害級といわれているこの第5波を、皆さんと一緒に乗り越えていきたいと考えています。

「発熱外来の一医療現場から」

文責 さがみ野内科・呼吸器クリニック 野島 大輔

当院でも昨年から微力ですが発熱外来を一年近く続けて来ました。初めはスタッフともども不安を感じながらスタートし、徐々に慣れつつも今でも通常の診療とは違い気を遣いながら発熱外来を続けています。発熱外来では、通常診療とは違い別室に移動しなければならない事や感染防御服を毎回脱いだり着たりしなければならない大変さがあり、非常にストレスを感じながら診療をしています。

現在 1 日 8 人程度の発熱外来診療枠を設けて継続してます。先月までは日によって変動がありますがまだ余力がありました。8 月初旬になりほぼ毎日予約枠が埋まるようになり、中旬になった途端依頼が殺到し、とうとう、見切れずお断りせざるを得ない状況になってしまいました。受診を断らなければならない事は患者さんとの摩擦になる事もあり、非常に我々としてもストレスになります。


とうとうクリニックレベルでも医療崩壊が起きている状況です。

このままでは診断にも至れず検査待機中患者さんも生じてくる可能性があります。

どうかこのような医療現場を理解して下さい。我々も正直受診を断る事と患者数の多さに限界を感じ始めています。

残念ながらこのような現状はしばらく続くと予測し覚悟していますが、徐々に状態改善する可能性もあります。それはワクチン接種かと思います。発熱外来をしていて患者数の増加は顕著ですがワクチン接種している患者さんの受診は減っている事も事実です。

つまりワクチンが感染者を減らす事は間違いないと思われます。ワクチン接種に躊躇や不安がある方もいるでしょう。様子見てから打つ事を選ばれても構わないと思います。

しかし、コロナ感染終息に向けて可能な限り打てる方から打っていきましょう。一人一人のワクチン接種への積極性が感染終息の鍵になると思いますので宜しくお願いします。


以上、一医療現場からの意見です

「ウイルスとワクチンについて」

文責 えびな整形外科 山田 博之
海老名市医師会副会長・新型コロナ担当

ウイルスは動物の細胞の中で数を増やします。その時間がとても短く、2 つに分裂して次は 4,16,32,64,128,と倍々のような形で増えていって半日後には数百万個にもなってしまいます。ウイルスの遺伝情報(遺伝子の長さや数)は我々人間と比べてとても少ないですが、そのぶん複製が早く出来ます。また、ウイルスが進化してゆく方法は、どんどん増えるので遺伝情報が間違った複製(変異)をすることが多くなり、たまたまその環境にあったものが出来てそれが優勢になり生き残ってゆきます。それをウイルスでは変異株と言います。つまり試行錯誤をいっぱい繰り返して、生き残れるようになっていくということです。


このように、人間や動物とは一生の時間が全く異なるので、ウイルスが生きてゆく方法や材料を突き止めそれを阻止する薬剤をもし見つけたとしても、それから逃げる術を早い適応(進化)で早くすりぬけてしまうこともあり、これを薬剤耐性と言います。
もう一つのウイルスから防護するアプローチは人の自分を守る免疫システムに対処法を教えるワクチンがあります。ワクチンはその効果に応じて一定の割合以上の人に接種すれば感染を終息できることがあるし、そこまでできなくても感染の広がる速度や広がりを大きく減らせます。また、感染数を少なくすることによって変異ウイルスの出現機会を減らすことができます。


人から人に感染するウイルスは、国や人種、宗教や収入も関係なく拡がります。地域社会では、ワクチン接種を希望する人にはあまねく接種すべきです。グローバル化した世界では人類全体を考えて対応しないと、感染の拡大を防ぐとか収束させるという目標は達成できないです。多くの医療者は、希望する人には接種を可能な限り早く接種したいと考えています。

馬や牛とどまっていたかつての天然痘ウイルスは、変異して人にしか感染しなくなりました。天然痘は WHO が何年もかけてワクチンを多くの人に接種をし根絶できました。ワクチンの大きな成功例です。しかし、新型コロナウィルスはおそらく人以外にも動物に感染する人畜共通感染症であり、新型コロナウイルスの撲滅は人だけ抑えてもどこかの野生動物の中で残っていると考えられています。ですから、この戦いに勝って一見世界から無くなったように見えても野生動物からまた人に感染するかもしれないので天然痘のような根絶は難しいです。

もっと致死率が高い MERS ウイルスやエボラウイルスというウイルスが、局地的に押さえ込まれている状態にあります。この状態までの感染の収束が目標となると思います。

この戦いの方法はわかっています。マスクやソーシャルディスタンスなどで社会的に抑えつつ、ワウチンを接種できる人が早く多く接種してウイルスとの競争に競り勝つことです。



中等呼吸器症候群(MERS)について

エボラ出血熱について

薬剤耐性インフルエンザウイルスについて

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